愛されジョーズ

music writer 上野三樹

ぼくらの四十周年記念奏@恵比寿ザ・ガーデンホール(後半戦)

7月7日に行われた「ぼくらの四十周年記念奏 since 1977-4.2~1978.4.1@恵比寿ザ・ガーデンホール」の模様です。前半戦はこちら→

ぼくらの四十周年記念奏@恵比寿ザ・ガーデンホール(前半戦) - 愛されジョーズ

 

風味堂の渡くんにアンダーグラフの真戸原くん+FLOWのKOHSHI氏も飛び入り参加し、ステージ上には16人!というカオスな盛り上がりを見せた後、登場したのは奥華子さん。気づけばいつの間にかHOUSE BAND77 clay crewのメンバーもステージからいなくなっている(ちなみにド派手な金ピカ衣装でみんなにいじられ続けていた鍵盤の谷口喜男さんのみサポートで残られてました)。「こんばんはー!」と元気に登場した奥さん。常田くんが「せっかくなので奥華子さんには弾き語りをしてもらいたいなと思って」と言うと、奥さんが「みんなが休憩するための弾き語りでしょ(笑)」と返して「違います、違いますよ!」と慌てて否定していたのが面白かった。しかし、奥さんと言えば弾き語りなのである。

鍵盤の前に座って「今回は同級生ライブということで。飲み会にも参加させてもらってたんですけど、飲みすぎて記憶がなくて誰とも連絡交換せず無駄に終わってしまって(笑)。でも今日はみんなと一緒に歌えてとても嬉しいです」とMC。そして「まずは代表曲、聴いてください」と、始まったのは。♪大きな窓が〜あるお部屋っ、そう、あの有名なCMソング。まさに鉄板ネタです(笑)。生の弾き語りで聴く♪お部屋探しMAST、客席の子供たちも大喜び。そして素晴らしかったのが「遙か遠くに」。「40歳というのは色んな方向に人生が別れる時なのかなと思います。色んな40歳がいるな、昔、自分が思い描いていた40歳ってどんなだったかな、と思いながら今の自分に向き合いながら作った曲です」と話してくれたのだが、何とも心にガツンとくる弾き語りだった。《こんなにもたくさんの人がいて すれ違い出会い続けても/私を待ってくれる人は何で一人もいないんだろう》時々、そんな風に気落ちしたりして、まだまだ揺らいでいるのも40歳になりたての私たちらしさなのかもしれない。でもそんな日があったとしても自分を信じる力を持っているのも、40年生きてきたっていう証として誇りに思ってもいいのかもしれない。彼女の真っ直ぐに輝く歌声を聴きながらそんなことを考えた。


◆「遥か遠くに」も収録のアルバムダイジェストです◆

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 弾き語りの後はバンドのメンバーと共に、常田くんがずっと好きな曲だという「ガーネット」を。このイベントをやるにあたって、是非この曲を「バンドっぽいアレンジをやってみたかった」のだとか。奥さんが「ライブのデモを作りました、と常田さんから音源が送られてきたんですけど。それがもう、このままCDにしていいですか?ってくらいのクオリティで」と話していた。今回のイベントは一夜限りだし、スキマスイッチも忙しい中、常田くんが音楽監督をつとめてバンドをまとめあげるのは大変だっただろうなと思うけれど、仲間の好きな曲を自分流にアレンジしてステージで歌ってもらうというのはアレンジャーとして、プロデューサーとしてすごくやりたかったことなんだろうなとも思う。常田くんが「青春を歌わせたら日本一」と絶賛する奥華子さんの「ガーネット」はこの日、同じ歳のミュージシャンの手によって豊かな奥行きを持つアレンジの中で、ハンドマイクでひたむきに歌う彼女と共に、まばゆい光を放っていた。本当に音源にして欲しいくらい、このステージに立つミュージシャン全員の音楽への深い愛情を感じた。

続いてはFLOWのKOHSHIさんとKEIGOさんが登場。77年度会でもひときわヤンチャな風貌のふたり(笑)。「色んな40歳がいますが我々は落ち着きがない方の40歳なんで(笑)」とKEIGO。最初に披露してくれたのは「Sign」なのだが、この曲はアニメ『NARUTO』のオープニングテーマということで、同じくスキマスイッチが担当したアニメ『NARUTO』のオープニングテーマである「LINE」とのマッシュアップという特別アレンジでアグレッシヴに届けた。更に「我々、77年度世代にはど真ん中のアニメソングなんじゃないでしょうか」とFLOWが2013年にリリースしたカバー曲「CHA-LA HEAD-CHA-LA」を。凄まじい歌唱力とエネルギーであらゆる世代(というか幅広いドラゴンボール世代)のオーディエンスを盛り上げた。

◆FLOWは今年で15周年◆

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 そしてこのイベントはここで、シークレットゲストが登場。HOME MADE家族のMICRO氏である。「77年度会のパーティがあるということで来ました!僕らHOME MADE家族は今、活動休止中なんですよ。でもシンちゃんが今日このイベントをやるって言うんで、もうどんな形でもいいから出たいと思って来ました!」と挨拶。「僕は153センチしかないから普段シンちゃんの肩に乗ってるからね(笑)」と笑わせる。77年度会の飲み会でも登場するだけでパッとその場を華やかにしてしまう、生まれながらのエンターテイナー、MICRO。「活動休止中なのでHOME MADE家族の曲はできないんですけど、俺がめちゃめちゃ好きなアーティストの曲を大好きな仲間と、今日出会えたお客さんと一緒に楽しめたらいいなと思います!」と、始まったのはマーク・ロンソンのカバーで「Uptown Funk」。もう最高&圧巻のパフォーマンスでこの曲を、このステージを、この夜を自分のものにしてしまうMICRO。そして自らが輝くばかりでなく、セッションでミュージシャンをひとりずつ煽ったりしながらそれぞれのプレイが光る見せ場を生み出していくのがさすが。「楽しむことはもちろんだけど、みんな本気が見たいでしょ?音楽の本気が見たいでしょ?見せてやるよ!」と宣誓した、その心意気が音になって伝わってきた時、オーディエンスはじっとしているのがバカバカしいくらいに、みんなで踊って声を上げずにはいられなかった。

◆カバーしたのはこの曲◆

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ちなみにこの後もMICROさん大活躍なのですが(笑)、先に書いておきます。HOME MADE家族は活動休止中だけれど、立ち止まることなくMICROは自分自身と自分の音楽を磨き続けているんだなと思った。そんな姿を見せてもらったことは同じ77年度会の仲間たちにとっても嬉しく刺激的なことだったのではないでしょうか。いいねいいね。「また50周年もここでライブしようぜ!」と大いに会場を沸かせてステージを去っていったMICRO。彼は50歳でもこんな感じなんだろうなあ(笑)。

そしてこの日のトリを飾ったのは、来年デビュー20周年を迎えるKiroro。常田くんが「やっぱり僕らの年代の代表的アーティストと言えばKiroroだなと思いまして」と紹介。彼女たちがまずは、言わずと知れた国民的ヒット曲「Best Friend」を披露してくれたのだが、その前の千春さんのこんなMCがさりげないんだけどすごく良かった。「Kiroroは来年20周年、私たち自身は40歳になりました。綾と一緒に人生半分、やってきました。綾が隣で笑ってくれたからこの曲ができました」


◆昨年発表された15年ぶりの「Best Friend」新録音源◆

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 終始、ニコニコと微笑みながら鍵盤を弾く金城綾乃さん。千春さんはワンコーラス目の最後の♪Best Friend〜のところで綾乃さんへと手を伸ばしてふたりでニコニコ。そして後ろを振り返り、77年度会のミュージシャンたちに向かってお辞儀をした。愛に溢れた優しい瞬間に会場には大きな拍手が起こった。「私たちはそれぞれ3人ずつ子供がいて、今は月に2〜3回のペースでライブをしながら活動をしています」という千春さんの話も、サラッと言うけどすごいこと。常にどちらかが妊娠してるか産休中かという状態が10年くらいは続いたんだろうことが想像できる。そんな中でも歌い続けてきたし、これからも歌い続けていくであろう、その自然体の強さがKiroroなんだ。2曲目は「未来へ」。この曲、あらためて聴くと、母親へ向けた内容でもあるんですね。これまで母親の優しさに対して素直になれなかったこともあったけど、《あれがあなたの未来》と歌われているのは彼女たちがふたりとも立派な母親でもある今になってみると何だか予言の歌でもあるような気がして不思議。彼女たちとバンドの演奏が終わり、常田くんが「これにて終了になります、ありがとう!」と本編終了。

アンコールではMICROさんが「全力少年」と書かれたTシャツを着て、出オチ感満載の登場(笑)。常田くんも何故か「全力少年」Tシャツに着替えさせられている。「全力少年」Tシャツを着たおっさんふたりの2ショットに会場から笑いが。そしてMICROが「俺さっき洋楽の一番好きな曲を歌ったけど、邦楽で一番心が熱くなるあの曲を歌いたいんだよね!」というMCからの、曲はもちろん「全力少年」。イントロが高らかに華やかに鳴らされる中、「俺たち40歳なんだって、そんなこと全然関係ないよ。年齢はただの数字!」とMICROが叫ぶ。途中で真戸原くんも加わっての40歳だらけの「全力少年」(笑)!コール&レスポンスも盛り上がり、MICROが「いくつになってもビビんじゃねえぞ!」と締めてくれた。


◆若っっ(笑)!◆

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 そして、このイベントを締めくくる最後の最後はやっぱりこの曲なのではないでしょうか。再び全ての(クボくん以外ね)出演者が登場して、アンダーグラフの「1977年生まれの僕らは」を演奏することに。ここでも1978年2月生まれである常田くんの「年度こだわり」が炸裂し、「1977年度生まれの僕らは」に歌詞を変えて歌ってもらっていました。

◆まさにテーマソング的な1曲◆

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真戸原くんが「またやりましょう」と言い、常田くんが「みんなちゃんと活動して、また集まりたいね」と。アイリッシュ風のアレンジと三拍子のリズムに乗って、「ぼくらの四十周年記念奏」は華やかに幕を閉じました。同級生というくくりのイベントってなかなか珍しいと思うのだけれど、20代とかじゃなく40代の入り口に立った今だからこそ、闘争心だけでも懐かしさだけでもない、いいバランスで共に音を鳴らしあい、歌いあえたのではないかなと思う。若い世代と、まだまだ第一線で活躍されている先輩方に挟まれた、この世代ならではの葛藤も抱えつつね(笑)、まだまだ前に進んでいくのだ。本当にそれぞれがそれぞれの活動をちゃんと続けていたら、またこんな楽しい時間が一緒に過ごせるかもしれないね。

 

77年度会の音楽ライター/上野三樹