遂に尾崎世界観さんにお会いした話。
職場結婚なんてのもよくあることだから、同じような仕事をしている夫婦って世の中にはたくさん存在すると思います。私は音楽ライターで旦那は音楽雑誌の編集をしているので、うちも同業者みたいなものです。家庭内で仕事にまつわる話ができたり、大変さが理解できたりとか、そういうメリットもあれば、その逆もあると思います。「やりづれえ!」ってやつです(笑)。
私の場合、初対面のミュージシャンに取材する時に、しかしお相手の方は旦那がいつもインタビューなどでお世話になっていたりするケースが度々あります。そもそも私が結婚後も旧姓のまま仕事を続けていることもあり気づかれにくいですし、もちろん旦那のことに触れずに取材を終えることも多いのですが、先方から「金光さん(旦那)にお世話になっています」と言われる時もあります。それで取材がスムーズにはじめられる場合もありますし、この方にはちゃんとご挨拶しておかねばみたいな方には取材が終わってからこちらからさせていただく場合もあります。先に言うか、後に言うか、このタイミングも悩むところです。いち音楽ライターとしては先に言うのはズルいと思っているふしがあります。
私がもし会ったら初対面なのに「やりづれえ!」ってなりそうな人ランキングのダントツ1位がクリープハイプの尾崎世界観さんです。旦那は何故か彼との取材の時に、家庭内のことを誌面で暴露していることが多いのです。「それ言わないでよ!」的な嫁としては言われたくないネタです。そういう時は全部読んだ後にパンッと勢い良く雑誌を閉じて、1回深呼吸するようにしています。
尾崎「……最近、娘さんは元気ですか?」
ーー(旦那)自分からシングルの話するの止めたな(笑)。
尾崎「LINEのアイコンが可愛い娘さんだから」
ーー可愛いだろ。最近チューの使い分け方を憶えた。
尾崎「何ですかそれ?」
ーー普段はチューしてくんないんだよ。でも「おとうしゃん、チューしよ」って言ってくることがあって。その後ほぼ間違いなく、おもちゃをねだられる。「このあんぱんまんのあいすくりーむこうじょうであそびたいの!」って。
尾崎「だから女は……」
(『音楽と人』2016年9月号)
まあこのぐらいの娘ネタは全然かわいいもんですよ。他のも引用しようかと思いましたが自粛します(笑)。深夜に家に帰ったら台所に洗い物が山積みで絶望する話とか、床のキッチンマットがズレるので絶望する話とか。あとは固定資産税払い忘れてた話とか、誌面で初めて知ることも!
これらのことで旦那に何か問い詰めるようなことなどしません。自分の具体的なエピソードをまず話すことで、相手の同じようなエピソードを引き出したり、より気持ちよく話していただいたりする、ということはインタビューする側の手法のひとつとしてあることは私も知っています。それで尾崎さんが喋ってくれるなら構わない、そんな思いです。
そして遂にその時が来ました。私にクリープハイプの取材のご依頼をいただいたのです。初めて尾崎世界観さんにお会いします。うちの台所事情まで知られているなんて、初めて会うのに初めて会うような気がしないし、気が気じゃありません。取材現場で撮影を終えて、和やかにいざクリープハイプの皆さんと取材をはじめようという時に、言われてしまいました。
尾崎世界観「いつも金光さんにお世話になってます」
うわー!もうこの時点で恥ずかしさ全開。これはもう、めったにない恥ずかしさでした。
というわけで、クリープハイプの皆さんに取材させていただいた記事が掲載されている『anan』、現在発売中です。 新しいシングルのお話ですよ!
ちなみに現在発売中の『音楽と人』5月号、P 159の編集後記的な記事の中でこんなエピソードが書かれていました。
先日、金光の奥さんによるインタビューを一般誌で受けたとかで、それと何かにつけ比較してくる尾崎。「奥さんはそうじゃなかったなあ」「奥さんはもっと優しい聞き方してくれたなあ」「奥さんもっと歌詞聞きこんでたなあ……」と何かにつけて言ってくる。あーやりにくい(笑)。
どうやら今回の件で「やりづらさの仕返し」ができたようです。