anoneさん。
毎回、大切に見ていたドラマ『anone』が終わってしまった。
これは一体、何を描くドラマなのか考えながら見ていたけど、結局何だったんだろう。
キーワードは「偽物」か「本物」か。
本当の母親じゃなかったことがわかって、それ以来、娘が家族として接してくれなくなった亜乃音さん。
両親に捨てられて、家族というものがよくわからないハリカちゃん。
そんなふたりが出会って、本物の親子みたいになった。
優しくし合うことが嬉しい、「おかえり」と「ただいま」が言えることが嬉しい。
ただそれだけで、「偽物」だっていいじゃないか、と思った。
ちょっと嬉しい日にはイチゴのショートケーキを食卓に並べるようなささやかな日常のなか
「偽札」作りに手を染めていく登場人物たち。
本物の何かになれなかった自分たちだけれど、「偽物」がどれだけ世間で通用するのか見てみたい、そんな気持ちもあったのかなと思う。
そうした大人たちの目論見に巻き込まれたハリカちゃん。
彼女と彦星くんとの関係が、このドラマの唯一の清涼剤だった。
一番つらかった時に互いを支え合った美しい記憶。
画面を見ながら、それに応じて泣いたり笑ったり戸惑ったりするハリカちゃん役の広瀬すずさん。
対面していないシチュエーションでのシーンがすごく多くて難しい演技だっただろうなと思います。
そして彼らのやり取りの中で最も重要だったのがハリカちゃんが彦星くんについた、渾身の「嘘」でした。
ハリカちゃんはその「嘘」で本当の気持ちを彦星くんに伝えたのです。
そんなこともあるんだなあ。すごい脚本だなと思います。
ようやく実際に面と向かって会ったふたりが最後に、振りあった手を互いに近づけて、少し触れ合うシーンもすごく良かった。
妄想の世界で、ふたりがただの高校生で、海辺かなんかに腰掛けて、イヤフォンはんぶんこして音楽聞いたりするTHE・青春のシーン。
完全に「打上花火」が流れましたねえ。
最終回は中世古くんがハリカちゃんに「どうやって息してるの?」なんて問いかけるシーンなんかもありましたが、そのあたり、ちょっと駆け足で詰め込んだかな、という気もしたりして。
あと2回くらいは見たかったかな。
その時に、自分が辛いからって誰かを辛くしていい権利なんてないんだ、的なことをハリカちゃんは中世古くんに言いました。
そういえば『アンナチュラル』のミコトさんも最後に法廷でそんなことを言っていてカッコよかったですね。
あんたの不幸になんて興味ねえんだよ〜!でしたっけ(笑)。あれ最高だったな。
今シーズンの名ドラマ2作の主人公には、生い立ちに負けずに凛と生きる、そんな共通点がありました。
『anone』は好きなシーンが多くて、またいつかじっくり見返したいドラマです。