愛されジョーズ

music writer 上野三樹

ぼくらの四十周年記念奏@恵比寿ザ・ガーデンホール(前半戦)

その話が出たのは、昨年10月に行われた77年度会の飲み会の席だった。

1977年度生まれの音楽業界関係者によるその集まりは、スキマスイッチ常田真太郎氏が中心となって3年目の開催ということもあり、ミュージシャンをはじめ、イベンターや舞台監督やPAや事務所関係者やレコード会社のスタッフなど50人以上が参加する盛大なものになりつつあった。そこで常田くんが締めの挨拶で「来年は、僕ら1977年度生まれの40周年なので7月7日にイベントをやろうと思います!もう会場も押さえました!」と。

あれから9ヶ月の時が過ぎ、既に登録者数が100人以上だという音楽系77年度会による「ぼくらの四十周年記念奏 since 1977-4.2~1978.4.1」が恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催された。

今回のイベントは常田くんが音楽監督をつとめるハウスバンドが演奏しながら、様々なヴォーカリストたちが交代で歌っていくというスタイル。以下、当日の模様をレポしていきます。

HOUSE BAND 77 clay crew

 ■音楽監督&Keyboard:常田真太郎(スキマスイッチ)
 ■Keyboard:西池達也、谷口喜男
 ■Guitar:藤本一樹、佐藤大
 ■Bass:三浦“ジャイ”剛、御供信弘
 ■Drums:佐藤大輔
 ■Percussion:森秀輝
 ■Trumpet:中野勇介
 ■Sax:村瀬和広、大郷良知
 ■Chorus:竹本健一
 ■Violin:徳永友美
 ■Viola:岡さおり

開演前のSEではB'zや渡辺美里らの懐かしいヒットナンバーが流れてアラフォー世代を興奮させながら、いよいよバンドのメンバーが登場。常田くんはいつものステージ向かって右側の位置で大所帯バンドの総指揮を取るような形でスタンバイ。そこに「トップバッターをやらせていただきます!」と、ひょいっと登場したのはクボケンジ(メレンゲ)だ。最初に歌われた「エース」の瑞々しい輝きはすごく印象的だった。同じ歳のバンドたちをバックにハンドマイクで歌い上げる姿はエネルギーに満ちていた。《いつだって僕らは生まれ変われる なんか なんか 胸が熱くなって》ーーそんな歌を40歳のぼくらが今、高らかに鳴らすことがこのイベントにふさわしいオープニングだったように思う。

「1977年度生まれの飲み会でね、僕も2回行ったんですけど。なかなか馴染めずに(苦笑)。今日もほとんどまだ喋れてないんですけどね」というクボくん。そんな(全員同級生なのに人見知りを発揮してしまうタイプの)彼がトップバッターをつとめたのは理由があって、彼はこの後、他のイベントにも出演するダブルヘッダーだったのだ。この後、次の会場に移動してしまうので「クラス写真を見返して『こんな奴いたっけ!?』ってなると思います(笑)」と言いつつ2曲目は「シンタくんとは昔から交流があって、時々気にかけてくれたりして。たまに褒めてくれる曲を今からやります」と「うつし絵」を。パーカッションにドラム、バイオリン、キーボディストも3人(!!)という重厚かつ広がりのあるサウンドの中で奏でられたこの曲はいつものバンド・アレンジとはまた異なる素敵さを纏っていた。

 

新垣結衣さんに提供した楽曲のセルフカバーです◆



お次に登場したのはアンダーグラフから真戸原直人&中原一真。黒いシャツ&紺のシャツでまるでコンビのような出で立ち。1曲目は「ツバサ」だったのだけれど、これがまたアレンジが超新鮮で洗練されたカッコ良さ。アンダーグラフもまた青春の日々の挫折や葛藤、そこからもがきながら歩んでいく輝きを鳴らしながら登場したバンドだけど、今もこうして過去の曲をしゃんとした姿勢で鳴らせているのは素晴らしいことだと思う。クボくんのナイーヴさも昔からだけど、真戸原くんは本当にピュアな人。彼らと常田くんとの付き合いも長く、出会いはデビュー当時に広島で一緒にお好み焼きを食べたのだとか。MCではその頃のアンダーグラフが常田くんにサポートしてもらって、ライブをした時の話になりました。

真戸原「一緒にやりましたよね、ライブ」

常田「やりました、やりました」

真戸原「僕らアンダーグラフのメンバーは小さな車で移動して、シンちゃんだけ新幹線でしたけど」

常田「いやいやスケジュールの都合よ!?(笑)」

ーー語り継がれるこの話、好きです(笑)。

そして「スキマスイッチがどんどん売れていく中でシンちゃんが僕らの曲を褒めてくれて、それがすごく励みになってます。困った時の常田真太郎頼みというか、アンダーグラフはメンバーがひとり脱退したんですけど、その時にお願いして一緒に書いた曲です」と「素敵な未来」を披露。そうだ、この曲は真戸原くんと常田くんの共作で歌詞が書かれたのだった。当時、取材させてもらったんだけど、真戸原くんが大切な仲間と別れた悲しみを、ちゃんと言葉にするという作業を常田くんが手伝ってあげたんだなと思った。こうして一緒に演奏する姿を観たのは初めてだったので、それも感慨深かったです。いつも一緒にいるわけではないけれど、いつもどこかで気にかけている、彼らのそんな繋がりを感じさせる熱演でした。


◆MVは行定勲監督◆

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さて、お次は安藤裕子さん。登場するなり、もうフェアリーな可愛さで、「ファミリー感のある空間ですね!」なんて言いながらしばしお喋り。緊張を話すことでごまかしてるなんて言いつつも、いざ歌い始めると本当に麗しき声で一瞬にして会場をふんわりと包み込みます。そんな1曲目は「ドラマチックレコード」、バンドの演奏もメロウで豊かなアレンジ&サウンドに一気に様変わり。歌い手によって演奏全体の質感が変わるような印象で、それは本当にミュージシャン&シンガー、そしてPAさん(もちろんPAさんも77年度会メンバー!)全員の力量だと思うんです。

 

◆77年度会の妖精系歌姫◆

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そしてここからは更にこの日ならではの展開に。常田くんが「僕の相方は77年度生まれじゃないから出れないんだけど誰かにスキマスイッチの曲を歌って欲しくて」と、安藤裕子さん+Kiroro玉城千春さんのデュオによる「奏(かなで)」を。この名曲に女性の声が重なり合うなんて、かなり贅沢でレアなバージョンでした。常田氏の鍵盤もいつもより心なしかフェミニンだった気も(笑)。しかも女性ふたりは初対面で一緒に歌うのも初めてだったそうですが、ばっちりのデュオっぷり!おふたりの声の違いもどっぷり堪能できて、ずっと目を閉じて聴いていたかったなぁ。玉城さんは「安藤さんの曲はよく聴いていて、あんまり喋らない方なのかなと思ってたんですけど、とてもたくさんお喋りしてくれて。楽しいな〜と思って(笑)」とおっしゃっていました。とても和やかなムード。

お次に登場した方は、常田くんと同じようにハットを被っていて、同じように隣に並ぶとまるで鍵盤デュオみたいな佇まいに。そう、風味堂渡和久さんです。「常田くんのリクエストで、僕がまだ福岡にいた頃に書いた曲をやります」と「ママのピアノ」を披露。続く「ナキムシのうた」では真戸原くんとKOHSHI(FLOW)も加わって、オーディエンスも総立ちでハンズクラップ。楽しいムードに。

 

◆これも名曲やね。風味堂とFLOWは同じオーディション出身なんだって◆ 

youtu.be

 

☆☆長くなりましたので前半戦はここまで☆☆