愛されジョーズ

music writer 上野三樹

ドジョウを飼った日。

先月の下旬、幼稚園から「プール開きのお知らせ」をもらってきた。そこには衝撃の一文が添えられていた。「プール開きの日に子供たちがドジョウつかみをします。2匹ずつ持ち帰りますのでお家で飼ってみてください」。ド、ドジョウ?

園庭の大きなプールに何十匹ものドジョウを一斉に放ち、それを子供たちが必死につかまえる。その光景は何ともスケール感があって面白そう。しかし、金魚一匹すらいない家庭で、水槽系のペットを飼ったことがない私が、いきなりドジョウの飼育をするとなるとハードルが高すぎる。でもきっと子供の教育に何らかの良い影響があるのかもしれない、それも幼稚園の教育の一環なのかもしれぬとドジョウを飼う決意をした。したものの、何からどうしたら良いかわからずに、まずはネットなどでドジョウのことを調べてみることにした。出てきたのはいきなり、柳川鍋の画像だった。イケナイものを見てしまった。

とはいうものの、プール開きの日と広島旅行が重なっていて、その日は幼稚園をお休みすることが決まっていた。そしたら担任の先生が、カメ美ちゃん(←娘。便宜上の仮名です)のドジョウは幼稚園で預かっておきますので後日お渡ししますと。なので実は広島旅行中もドジョウのことを調べたり、水槽をAmazonに発注したりと、なかなか頭がいっぱいだった。東京に帰ったら家にドジョウが来てしまう。迎え入れる準備をしなくてはならない。

調べたところによるとドジョウは水槽の上から跳ねて飛び出して死んでしまうことがあるという。なので、高さ40センチ以上の水槽を探し、幅も60センチくらいあるものを購入したら、家にとんでもなくデカいダンボールが届いてドン引きした。ドジョウの為にこんな……置く場所もないのに。しかも旅行から帰った翌日、幼稚園に行くと「すみません、実は幼稚園で飼っていたドジョウが全部死んでしまって……」と先生に言われ、「あっ、だったらもういいです」と言いかけたけど「また後日、ドジョウさんをお渡ししますので少し待っててください」と。後日がいつなのかもわからないまま水槽を放置していると2日後くらいに、カメ美ちゃんのお迎えに行ったら、先生から、よく縁日の金魚すくいをした時にもらうようなビニールの袋をもらった。中には薄茶色したドジョウ、長いのと短いのが2匹、入っていた。

その日の夜はまだ水槽に水を用意していなかったので、ひとまずバケツに移した。ジェックスグラステリア6点セットという水槽を買ったら「カルキぬき」という薬剤のようなものが付いていたので説明書きを読んで水を作ってあげた。翌日、水槽に移してあげたらとても嬉しそうにしていた(ように見えた)。水槽台なんてものはもちろんないのでリビングの床にそのまま置いていたら、カメ美ちゃんは床に寝そべってドジョウの観察をしていた。

水槽に砂があると、そこに隠れたりくつろいだりするらしい。水草もあると良いというわけで、翌日、ペットショップの水槽コーナーのお姉さんに相談してドジョウに良いものを購入。ついでにオレンジ色の可愛いドジョウがいたので一匹連れて帰った。薄茶色のはマドジョウ、オレンジ色のはヒドジョウというらしい。砂は一度しっかり洗わなきゃいけないということで洗ったり、カルキぬきのお水を作ったりしていたら、ちょっと手が荒れた。ドジョウを飼うのはなかなか大変だが、砂や水草を入れると更に喜んでいる(ように見えた)。水槽もキッチンカウンターに移したらとても様子が見えやすい。砂の中に体を埋めて顔だけ出している姿なんかを見ると、何とも可愛くて癒される。ドジョウなんて全然可愛いと思えなかったのに、一緒に過ごすとたちまち愛情がわいてきた。

しかし、その翌日の夕方、大きな方のマドジョウが水槽の端に沈んだまま動かなくなった。やがて小さい方のマドジョウも元気がなくなって動かなくなった。何とかヒドジョウだけは助けたいと、何が悪いのかわからなかったけど、もし砂や水草がいけなかったのなら環境を変えてあげることしかできないので、再びバケツにカルキぬきの水を作ってマドジョウだけを移した。オレンジ色のマーちゃんはバケツの中から顔を出して口をパクパクさせるような素振りを見せた。「一体何が起こってるの?」「あたしどうなるの?」、そんな風に訴えている(ように見えた)。翌日の朝、バケツの中でマーちゃんも動かなくなった。本当に悲しかった。ドジョウなんて飼いたいと思わなかったのに、それでも一緒に過ごした数日間で大事に飼おうって決めたのに、すぐ死んじゃって。空になった大きな水槽だけが残った。旦那とカメ美ちゃんが3匹のドジョウのお墓を作った。これじゃあ何の教育にもならないじゃないかと思った。

「カメ美ちゃんちのドジョウさんは元気ですか?」と先日の個人面談で聞かれた。答えると「そうですか……実は他のお友達のドジョウさんも……」と先生も残念そうだった。もしかしたら最初の環境も良くなかったのかもしれないし、原因はよくわからない。幼稚園のママ友は、金魚を飼っている水槽にドジョウを入れたら、金魚が全滅したらしい。プール開きのドジョウつかみはどうやら毎年恒例の目玉行事みたいなので、来年また持って帰ってくるのだろうか。いつかまたドジョウを飼う時は絶対に幸せにしてあげたいと切に思う。誰かドジョウ飼育に詳しい人がいたら教えて欲しいです。

f:id:miki0507:20170608111432j:plain