愛されジョーズ

music writer 上野三樹

札幌の朝に起こった、プチ事件。

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 初日は台風の影響で中止になってしまった「RISING SUN ROCK FESTIVAL2019」。2日目は嘘みたいな快晴で、レンタカーを借りていた私(と娘)は車で石狩湾の会場まで行くことになっていた。しかし前日の夜に「音楽と人」チーム(編集、ライター、カメラマン)のご飯会に参加した時、ジャンボタクシーにひとりだけ乗れないので編集長(である旦那)を私の車に乗せて欲しいということになった。

 会場に車を停めるには駐車券が必要になるのだが、その駐車券購入のための抽選に外れたのがわかったのがほんの数日前で。Twitterでそれをぼやいたところ駐車券が余っているという方が譲ってくださることになり、しかしスマホチケットだから当日に駐車場でお会いする必要があると。出発前に旦那にそのことを伝え、会場周辺に近づいたら、その方と連絡を取ってもらいたいとお願いした。すると旦那は、そういうことが苦手なのか面倒くさくなったのか「俺は会場に着いたらすぐに打ち合わせがあるから無理!」と言われた。ああそうですか、って、なるよね普通。私は運転していてスマホの操作ができないのだから、そのくらいしてくれたっていいはず。でも「仕事だから」って言われたら仕方ない。

 まずは家族でホテルを出発し、音人チームが宿泊しているホテルへ。ホテル1階にあるコンビニの前に今日、彼らが乗り込むジャンタクが停まっている。「その後ろに車を停めて」と旦那に言われたけど、これは……これはもしかして、縦列駐車!言ってもいいですか、教習所以外で縦列駐車するの初めてなんですけど!という心の叫びなどつゆ知らず、私がモタモタしている間に旦那はサッと車を降り、スタッフと合流して「おはようございまーす!」なんて挨拶を交わしている。ジャンタクの運転手さんがバックしながらハンドルを右に左にぐるぐる回して苦戦している私に気づき、縦列駐車を誘導してくれた。車を降りて、運転手さんに「ありがとうございます、今日は後ろから会場まで付いていきますので宜しくお願いします!」とお礼のついでにご挨拶。この人に付いていけば間違いなく会場までたどり着けるんだ、と思ったらとても心強かった。そうだ今のうちにトイレに行っておこうとコンビニに駆け込むと、旦那が「もう出発しますよ〜」とすれ違いざまに声をかけてきた。トイレに行った後、急いで車に戻ってシートベルトを付けたタイミングで、前のジャンタクがおもむろに出発!旦那は車に乗っていなかったので「そっか、結局ジャンタクに乗るんじゃん」、と思い、私は車のナビに会場の住所を入れるタイミングもないままだったので、とにかくジャンタクの後を追うように車を出発させた。

 ジャンタクの運ちゃんはさすがにプロフェッショナルで札幌の街をスイスイと走っていく。後ろから明らかに運転に慣れていない軽自動車が必死についてきているのがわかっているからか、そんなに無茶な車線変更などもなく、こちらに配慮してくださっているようにも感じた。ならば、その運ちゃんの想いにも応えるべく、完璧に後ろに付いていくしかない。付いていけば確実に石狩湾に到着するのだ、そんな気持ちでどのくらい走っただろうか、私はかなり集中して運転していた。やがて後部座席の娘が「なんか、いっぱい電話がかかってくるんだけど」と話しかけてきた。彼女は旦那のスマホYouTubeを見ていた。「あ、スマホこっちに置いていったんだ、もしかしたら暇だから前のジャンタクから娘に電話をかけてるのかな」と何となく思った。「電話、取ってあげたらいいじゃん」と、後ろを振り返った数秒で、旦那の大きな荷物もこの車に積みっぱなしであることを確認した。特に何か問題が起こっているとまだ感じていなかったので、まだまだジャンタクの後ろを走ることに集中していたが、娘はYouTubeが見れないくらいあまりにも何度も電話がかかってくるので仕方なく対応しているようで、そのうちに「電話を切らないでってパパが言ってる」「パパは車に乗ってないんだって」――え?何?「パパはタクシーに乗ってるんだって」「だからどこかで車を停めて欲しいんだって」という5歳の伝言をいくつか繋ぎ合わせて私はようやく状況を把握した。旦那はこの車にはもちろん、前を走るジャンタクにも乗っていなかったのである。しかもケータイもなく、幸い、お金だけは持っていたようで、タクシーに乗り、タクシーの運転手さんに電話を借りて娘に必死の訴えを続けていたのだ。私はジャンタクを追うことを諦め、近くのコンビニに車を停めて現在地を伝え、旦那が乗ったタクシーを待った。

 「音楽と人」チームを乗せたジャンタクが先頭を、その後ろを私と娘が乗った軽自動車が追いかけ、それを置き去りにされた旦那(編集長)がタクシーで追いかけるって……どんな状況よ(笑)。旦那は娘に頼まれてコンビニで麦茶を買っているうちに、置いてかれちゃったそうです。

 言い訳させてもらうと、まあ何というか、出発前の「仕事だから無理!」っていうのがなかったら、こういうことになってないと思う。あの時に私は「わかりました自己責任ですねこっちで何とかしますね」というモードに入ってしまった。コンビニで「もうすぐ出発しますよ〜」と言われたのも「そっちはそっちでよろしくね」的な聞こえ方で、私はジャンタクの後を慌てて出発するしかなかった。旦那は結局、軽自動車の助手席で駐車場待ちの渋滞に巻き込まれながら、スマホチケットの持ち主との交渉もしてくれました。札幌の街でスマホも荷物もなくて置いていかれたら焦っただろうなあ。私ももうちょっと余裕があったら良かったなと反省しつつも思い出すだけで笑っちゃう、この夏とびきりのプチ事件でした!