しょうゆ、ラー油、アイラブユー。
志村けんさんが新型コロナウイルス感染によるご闘病の末に亡くなった。この信じられないニュースは今日1日、日本中を、そして世界にも駆け巡った。ウイルスという見えない敵と戦いながら状況が日々、深刻化する中で、悲しみは大きなひとつの波になり、多くの人の心を飲み込んだ。
志村けんさんといえば、ザ・ドリフターズとしても大活躍された方。私たち世代は『8時だョ!全員集合』が始まる時には、本当に家族全員でテレビにかじりついて、みんなでワクワクしながら見て、笑っていた。そんな幸せな記憶や、あの時代の「お茶の間」であり「家族団らん」というものをたくさん生み出してくれたコメディアン、それが志村けんさん。ドリフ育ちな私たち世代は、スイカは超高速で種を飛ばしながら食べ、ヒゲダンスを踊り、「最初はグー」とくれば「またまたグー、いかりやチョー介、頭がパー」なわけだし、「だいじょぶだぁー」が聞こえたら太鼓が3回鳴らされて「ウェ、ウェ、ウェ」とえずくのがお決まりなのである。本当に色んな面白いことを思いついて、楽しませてくれたものだ。「バカ殿」や「変なおじさん」も好きだけど、他にも忘れてそうなものがあるんじゃないかと思って調べてみたら、『志村けんのだいじょうぶだぁ』で子供の頃に大好きだったフレーズがあった。それが「早見優、北天佑、しょうゆ、ラー油、アイラブユー」という、いしのようこさんとの夫婦コントで仲直りする時に唱えていたもの。見たことない人にはこれがどんな面白さかわからないだろうけど、例えば家族で誰かがちょっとひどいことを言った時なんかに「そこまで言う!?」から始まって「早見優、北天佑、しょうゆ、ラー油、アイラブユー」と一緒に言えば、互いにたちまち笑顔になってしまうようなものだった。志村けんさんは家族円満をもたらした神でもあった。いつもいしのようこさんが志村けんさんに「明日は何時に起きるの?」と聞いて「ご、ご、ご、5時!?」って過剰反応するお決まりのパターンも大好きだった。色んな芸が生まれた背景に、実際にモデルとなった人物がたくさんいたという話をきくと、志村さんは人間観察や人間そのものが好きなんだろうなって思った。だからこそ人間味のあるバリエーション豊かな芸が生まれ、多くの人に愛されたんだろう。
今後も朝ドラや映画や、そして聖火ランナーなど様々な予定があったという志村さん。もっともっとお仕事がしたかっただろうと思うと、やりきれない想いでいっぱい。今まで笑わせてくれて、そしてたくさんの笑顔の思い出をありがとうございました。これ以上、事態を悪化させないために。私たちに今できること、今すべきことは何だろう。より一層、考えながら過ごしていきたい。