終われないまま、始まってゆく。
3月も終わろうとしているのに、季節外れの大雪が降った。東京都は週末の外出禁止要請が出されているから、巣ごもりにはもってこいの天気となった。
もともと私は3月というこの季節がちょっぴり苦手だ。卒業シーズンや引っ越しで人と人との別れも多く、新しい生活への不安や期待が入り混じっている街のそわそわした空気に触れて、上手く呼吸ができないような状態に、若い頃はよく陥った。最近ではもうそんな、若者特有(だったんだなと今では思う)のセンシティヴな感じにはならないけど、そのかわりに、子供を持つ母親としてのエモーションがどばっと押し寄せてくる。
6歳の娘はこの春、幼稚園を卒園して、小学校にあがる。新型コロナウイルスの影響で、卒園式は短縮バージョン、謝恩会は中止になり、思う存分にその感動を味わう暇もなくバタバタと終わってしまった。しかし「終わり」という区切りをつけられただけ、まだ良い。娘が所属するサッカークラブはU-6という調布のスタジアムでの大会に参加する予定だったけれど、練習も含めて全て中止になり、4月からの再開もまだわからないままだ。みんなでお金を出し合って購入したお礼のプレゼントも渡せないまま、もう還暦に近い年齢のコーチがメールでこんな文面を寄せてくれた。「カメ美ちゃんがたくさんドリブルをしている姿を見ると、嬉しくて泣きそうな気持ちになります。サッカー選手を目指してもらいたいとは思いません、いつかカメ美ちゃんがお母さんになった時に子供にサッカーの楽しさを教えてくれたらこんなに嬉しいことはありません」と。
一方で、3歳から通っているリトミック教室も3月は全てレッスン中止になってしまい、最後のまとめもできないまま、4月からは小学生のクラスになり、チームワークばっちりだった友達ともバラバラに、ずっとお世話になった先生も変わってしまう。3月の終わりに、レッスンはできないけど修了式だけ短い時間でやりましょうとご連絡をいただいていたけど、直前の「自粛要請」の記者会見を受け、それもなくなってしまった。そんなタイミングで先生が手紙を郵送してくれた。「カメ美ちゃんやおなじステップ5のおともだちとあえなくてみんなとリトミックができなくて、せんせいは、とてもざんねんでした。そして、かなしかったです。(中略)4がつからはしょうがくせいのクラスですね。たのしみにしていてください」と。
「終わりと始まり」って、よく言うけど。ちゃんと終われないままで、容赦なく4月になっていく。こんなにも「終われないまま始まっていく」季節は初めてだ。だけど、サッカーのコーチのメールや、リトミックの先生の言葉が、とても心に染みた。会えないからこそ、気持ちを言葉で、文字で伝えるってすごく大事だ。触れたり、声を出したり、顔を見たり、なかなかできなくても、言葉で想いを伝えよう。やりきれない日々を、そうやって、ひとつひとつ、自分で漕ぎ出しながら、今を乗り越えていくしかない。そしていつか「ありがとうございました」って向き合って伝えたい。