愛されジョーズ

music writer 上野三樹

はじめてのならいごと問題。

高校生の時、私は結婚も出産もしないと思っていました。それなのに何故か「もし自分の子供を育てるなら何を習わせたいか」ということだけはぼんやりと考えていました。始めるのなら早い方がいいと決め込んでいたのは、2歳とか3歳とかの時期に何かをスタートさせればきっとプロの音楽家や芸術家やアスリートといった「何者かになれる」という幻想があったからなのかも。私は音楽ライターとして音大生の取材をすることも多いのですが、そういう子たちはやっぱり2〜3歳の早い段階からピアノのレッスンを受けていることが多くて。まあ、その一方で、小学生時代からピアノを習いはじめたり遅めのスタートでも才能があって練習に打ち込んだ子はすぐにコンクールで賞を獲ったりもするんですけどね。何より私だって幼稚園の頃から音楽教室に通わせてもらって割と早い段階からピアノを習い始めたというのに結局それによって「何者かになれた」わけじゃない。でも、やっぱりピアノでしょ、姿勢が良くなりそうだから女の子だったらバレエもいいし、小さい子の道着姿ってかっこいいから空手もいいし、体力つけるならプールかな……とか、ああ、こう書いていて気付くんだけど自分自身のコンプレックスを子供で挽回!みたいな、何かそういう人生のリベンジみたいなところもあるのでしょうか。親が考える子供の習い事って。

というわけで、いよいよ3歳になった娘に何を習わせるのか考えていた矢先に、リトミック教室の取材のお仕事をさせていただきました。そこは日本におけるリトミック研究の総本山みたいなところで、3歳児クラスのレッスンを実際に見学させて頂き、運営スタッフの方にリトミックとは何かというお話をお伺いしてきたのですが。リトミックとは、ものすごく簡単に言うと「リズム」「ソルフェージュ」「即興演奏」の力を鍛えるのもので、子供たちはピアノの音に合わせて動いたり歌ったりしながら、音感や表現力や即時反応力を身につけていく。日本でも歴史は古く、黒柳徹子さんの著書『窓際のトットちゃん』に出てきたトモエ学園の小林先生もその指導にあたっていたそうです。ピアノの音をしっかり聴いて、生き生きとした表情でのびのびと体を動かしている子供たちの様子に、取材が終わる頃には私自身すっかり魅了されてしまいまして。春からの生徒募集中ということですぐさま体験レッスンを受け、娘も予想通りとても楽しそうだったので、たちまち入会しました。幼少期のピアノのレッスンってうっかり厳しい先生にあたってしまうと先生怖い=ピアノ嫌い、というトラウマになるケースもありがちだけれど、まずはリトミックで楽しくピアノの音と親しみながら色んな感覚を身につけるのもいいかなと思っています。ちなみにリトミックは1歳〜5歳くらいの間にレッスンを受けて感覚を鍛えることが最も効果的だそうで、小学校にあがってからピアノを習い始めても、2〜3歳から習っていた子を半年で追い抜くとかいう噂も(マジか!)。リトミックをはじめたら案の定「大きくなったらピアノ弾きたい!」と言い始めた娘。ピアノを習うには、うちはマンションだけどピアノ買うのか問題。買うとしたらアップライトですか電子ピアノですか問題など、色々ありますので、まずはリトミックのレッスンに通いつつ考えたいと思います。